政府の失策のスケープゴートにされている感が否めない「少子高齢化」。わたし的には「少子高齢化対策」は政府の責務だと思っているのですが、何故か自然現象的に扱われています。そもそも何故少子高齢化は起こるのでしょう？
少子高齢化のメカニズム
学校では「人口転換理論」を習います。これによると社会は「多産多死」から「多産少死」そして「少産少死」へと移行するのでしたよね。団塊の世代が多産少死のシンボルで、その後は少産少死へと進み現在に至るという話です。原因として良く語られるのは、医療の発達、乳幼児死亡率の低下、女性の社会進出、育児コストの増大、未婚率の増加、晩婚化辺りでしょうか。
どれも尤もらしい原因ですが、確実な原因は「医療の発達」と「乳幼児死亡率の低下」です。「長生きさせる」「死なせない」という事実は「高齢化」に直結します。では少子化は？本来生物は生存や種の保存という意味から、抑制条件がなければ多産が自然です。しかしそうなっていないという事は「抑制条件」があるという事です。それは何か？経済です。
まずは出生率と出生数を見てみましょう。（出典：日本経済新聞）
続いて出産年齢の変化を厚生労働省より
この10年、20年で増加したのは35歳以上の出産で、若年層は減少し続けています。合計特殊出生率が増えた原因ですね。ところが直近は3年連続低下に転じました。そう35歳以上も減少に転じ、全ての年代で減少になったのです。
先ほど挙げた少子化の原因をもう一度見てみると、女性の社会進出、育児コストの増大、未婚率の増加、晩婚化でしたね。これらの多くは経済問題が発端です。
自分に置き換えてみればわかる事ですが、「自分一人でやっとの生活」で結婚を考えますか？派遣や非正規雇用で、所得は減り続け税金は増え続けるのに将来の画を描けますか？共働きで過酷な労働環境の中、保育所にも空きがないのに子供を持てますか？シングルマザーの3人に1人が貧困、子供の7人に1人が貧困、そんな中で子供を持つのはとても勇気がいる事です。
つまり少子化については、政府の経済政策の失敗が最大の原因なのです。
少子化を克服した国々の政府がした事
原因が見えてきたところで、実際に少子化を改善した国に学びましょう。北欧やフランスが有名ですね。
今回はフランス政府を見てみましょう。
フランスも大昔は家族手当の増額など日本政府と同レベルの小手先対策でした。そんな彼等が考え推進したのは、「多様化」と「両立支援」です。結婚していないカップルでも不利の無い権利を認め、子供を持っても仕事上不利にならないように権利を認め、子供を持つことを政府がバックアップしようとしたのです。
その為、フランス政府は「住居・教育・保育」に関する投資は惜しみませんでした。質を確保する為に、保育所の半分以上が公営ですし、公営団地などには保育所の併設などを取り入れています。何処かみたいに民営化して、自分が潤うような政策とは対照的です。また基本理念として「親の出自や経済状況などによって、子供の権利が差別されてはいけない」という本当の平等を目標としているのです。
また保育ママという仕組みも有ります。これは一般家庭を保育所として、数人の幼児を保育する仕組みです。なんとこれ公営保育所と同額で、何かトラブルがあれば全ての責任は行政が負う事になっています。
保育士の労働環境改善や、男女の育児休暇取得推進なども含めサポートは、繊細で非常に多岐に渡ります。
しかし何より大きかったのは・・・
政府が不安を払拭し、安心感を与えた事
「もし子供を持つ事であなたに不利益があれば、それは全て政府が補償します。もしパートナーと別れたり失業しても、子育ては政府が責任を持つので心配しないで大丈夫。」このメッセージを何度も投げかけ、実際に実現した事で政府を信頼できる人が増えたんですね。
信頼は大切です。自己責任なんてアホな事言ってる場合ではないのです。
この内閣府の資料にしっかり「現物給付の割合が大きい国は、出生率においても高い傾向がある」と分析はできているのに、行動には移さないんですよね。
特に政権の中枢にいる60代前後の男性は、今の日本社会において結婚や出産が女性にどれだけの犠牲を払わせているのか理解できていないと思います。
子供は社会の財産です。だからこそ「親になる人」「親になった人」が不安にならない社会を作る為、正しい投資と信頼構築を政府は行動で示す必要があるのです。
余談ですが、先日「ベビーカーで満員電車に乗るな、場所とって邪魔だ」と主張する方の記事をニュースで見かけました。こういう醜い主張をする人間と、それに同意する人間も少子化の原因の一つかもしれませんね。