鬼滅の刃と「正義」

2021年1月12日

私、成人以降ほぼアニメや漫画を観ておりませんでした。なので今回社会現象となっている「鬼滅の刃」も例に漏れず観ていませんでした。

しかし、逢う人逢う人このアニメの話を振ってくる・・・丁度そのタイミングで人生初の入院が決まり、手術後20日程ベッド安静となったのでその時間で観ました。

キャラクターのバックグラウンドの造り込みがしっかりしている事と、思考や感情が本人の心の声としてナレーションされている事で感情の共有がし易い構成になっています。ストーリー自体も正義と悪が明確に別れているにも関わらず、悪の側にも暗黒面に落ちた理由が描かれ作品に奥行きを持たせています。

何故ヒットしたのか?

アニメーションも素晴らしくストーリーも面白いのですが、子供にはグロいシーンも多く生死を描く少し重いテーマのアニメがこれだけのヒットを飛ばした訳は何処にあるのでしょう?

それは今の社会を投影している事が大きく関係している気がします。

主人公の炭次郎は「正義」という言葉そのままの存在として描かれています。一方で鬼は「悪」という存在ですが、元は同じ人間であり条理不条理は有れど鬼へと変容したという描かれかたです。これは人々が共有する「理想」「正義への憧れ」に対し、そう振る舞わない人々や、そう振る舞えない社会という現実を潜在的に忌避しているのだと思います。

物語の中には無残という大ボスがいますが、他の鬼は恐怖によって無残に支配されています。権力者に支配され忖度し、従わなければ罰を受けるという「近年何処かで度々見せられたウンザリする光景」とリンクします。

炭次郎をはじめ「正義」の側にいるキャラクターの多くは、鬼に家族を殺され「怒りと悲しみ」を「正しい行い」をなす為の原動力に変えました。一方で鬼の側は「怒りと悲しみ」を「欲望と暴力」に変えていきます。

そして炭次郎のセリフには鬼を「共同体の一員」「悲しい存在」と捉えている事が見て取れます。つまりこれはナショナリズムであり、相手がどんな状況になろうとも「共同体の一員」として扱うべきだと考えている様です。そこには「正義」だけでなく「寛容」という二文字も含まれているのです。

「正義と寛容」・・・この10年20年で一番失われた物ではないでしょうか?新自由主義による「今だけ、金だけ、自分だけ」「自己責任」、実際に多くの人々がこのハリボテ社会に辟易しているのだと思います。このアニメが子供だけでなく、大人も巻き込んだブームとなったのは偶然ではないでしょう。

自粛警察という曲がった正義

「自粛警察」時々目にしますよね。あれをしている人の動機は何でしょう?本人は「正義感」と答えるのでしょうが、明らかに曲がっていますよね。制限速度50kmの道路を60kmで走っている車がいたので自分の車をぶつけて止めた、みたいな話です。抗議したければルール内ですれば正義でしょうが、ルールを破った自身の悪をどう埋め合わせるのでしょう。

こうした「正義」の解釈自体を変えようと試みたり、その「曲がった正義」と「不寛容」をセットにして恰も「不寛容こそが正義」であるかの様な印象を植え付ける試みが、政治の世界からメディアを通じて行われてきました。

「鬼滅の刃」では「正義」「寛容」「共同体」という社会の礎となる物を再確認させます。

それだけ社会が「不正義に寛容」で「共同体より孤立」に振れすぎてしまったという事です。もう一度、社会の礎を取り戻したいと一般の国民は無意識下において欲しているのだと思います。政治が「国民より献金元」「平等より格差」「保守より保身」「正義感よりお得感」・・・こんな調子では共同体はただのバトルロイヤルです。

「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れる事なき様に。

生まれ持って得た強さは、あくまでも弱き人を助けるためのもの。その力は、世のため、人のために使わなければいけない。

天から賜りし力で人を傷つけること、私腹を肥やすことは許されません」

これは鬼滅の刃の人気キャラクター炎柱の煉獄に対し母親が説いていたセリフです。つまり「共同体において余力のある者が苦しむ者から奪う様な真似をしてはいけない。赤ん坊の時には誰もが共同体の余力を持って生かされたのだから、自身が余力を得たのであれば余力を必要とする者の為にそれを活かせ」という事です。

今、このコロナ禍においても余力のある政府は国民を救わず、従業員を簡単に切る企業、内部留保を増やす大企業という酷い現実の中にいれば、アニメの中に希望を見出し溜飲を下げる人が多数いても何の不思議もありません。

今年は衆議院選があります。ここで現実に鬼を倒すのか、それとも鬼の手下になるのか、日本人の「正義」が問われます。皆さん、選挙に行きましょう。

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