これを理解するにはまずミャンマーの歴史に軽く触れておく必要があります。
かつて英国の支配下にあったミャンマーですが、かつてアウン・サン・スーチーの父も率いていた国軍が重要な役割を担う中、1948年に独立を果たします。後に国軍の起こしたクーデターにより社会主義体制が敷かれ、その後高まった民主化の波も国軍に鎮圧され本格的な軍政が始まります。1988年にも再び民主化の波が訪れますが、民衆のデモに対し国軍は無差別発砲を展開し多数の死傷者を出します。今回と似ていますね。同じ年に国軍は新たな軍事政権を樹立し弾圧を強化。民主化の象徴であったアウン・サン・スーチー氏を軟禁。しかし翌年にスー・チー氏がノーベル平和賞を受賞した事で風向きが変わります。国際世論がミャンマーへの批判と制裁を開始します。
2008年にようやく民主化に前進する新たな憲法が制定されます。しかし内容的には国軍の権力を保持し、民主化の象徴であるアウン・サン・スーチー氏はトップに着けない仕様になっています。(恐らく国軍側としては選挙で大敗する事は想定していなかったと思われます)。この憲法ですが改正には全議員の75%の賛成が必要で、国軍議員が25%確約されている以上改正は非現実的です。2010年解放されたスー・チー氏が政治活動を開始。
2015年、2020年とスーチー氏率いるNLDが選挙で勝利したわけですが、特に2020年の選挙では80%を超える議席数を獲得しています。国軍からしたら焦りますよね・・・そこで「選挙の不正」を叫び出します。結果的にいわゆる非常事態宣言を一方的に宣言し、今回のクーデターとなり三権は国軍の最高司令官に握られました。「軍事独裁政権に引き戻された」と言う表現が一番しっくりくるでしょうか。
国軍と国営企業は既得権益でズブズブの関係と言われていますが、民主化の流れの中で民営化を進めようとするNLDは国軍関係者からは消えて欲しい存在なのでしょう。つまり「国を守るため」でも「国民を守るため」でもなく「自らの既得権益を守るため」に起こしたクーデターなのです。