MMTの話を理解出来ない人が多い状況は「天動説・地動説」に例えられたりします。
つまり多くの人が真実だと思っていた事が間違いで、実は「皆で間違える」と言う事はあるのです。
例えば現代であれば「太陽は東から昇りますよね?」と尋ねれば「そんなの当たり前でしょ」と思う人が殆どでしょう。ですが良く考えてみれば「私達からは太陽が東から昇っている様に見えるだけで、実際に移動しているのは太陽の方ではない」という事は知識として持っているはずです。しかし無意識に「地球の自転で太陽が東から昇って見えている」という事実よりも「太陽が東から昇る光景」の方を事実と誤認している為に「太陽は東から昇る」という言葉に違和感を感じないのです。まだ天動説の残り香の中にいる感じでしょうか。
つまり人は「事実」よりも「自分の立ち位置からの視点」や「経験」に引っ張られやすいという事です。
自分の過去の主張に支配されてはいけない
翻って経済に目を向けると、「国の借金は1200兆、国民一人当たり900万。これを早く返済しないと財政破綻してしまう。だから増税止む無し!」などという妄想が罷り通っています。これも主流派経済学では長らく支持されて来たわけですが、明らかな間違いでありミスリードです。私は某国立大学の経済学部卒ですが、確かに学部ではこの誤った考えがスタンダードでした。
これは貨幣の発行主体である国の財政と、外部から貨幣を調達するしかない家計を同一視する事から起こる間違いで、そうなると「借金と呼ばれるものは全て返済しなければならない」という倫理観が「間違い」をオブラートに包んでしまいます。
シンプルに考えれば分かりますが「お金」は「借用書」を発行する事で生まれ、返済によって消滅します。中央銀行(日銀)でも市中銀行でも同じです。例えば貴方が銀行で35年払い3000万円のローンを組んだ場合、市中銀行は「貴方が35年掛けて3000万円分の返済が可能か信用調査をし、不測の事態に備え団信などの保険を掛け貴方の口座に3000万円と記帳」するだけ、紙幣を刷る訳でもないので原価はほぼ0です。何処かから3000万円掻き集めて来るわけではありません。これを信用創造と言います。そして毎月貴方が返済する事で、発生した3000万円というお金(借用書の残高)が消滅していくのです。返済しなければ利息を外部から調達し続けなければなりません。
中央銀行ではどうでしょう?例えば昨年1人10万円の一律給付金がありましたが、現在では官庁会計システムADAMS-II(下図:財務省より)において「支払指図」で対応金融機関の日銀当座預金(準備預金)を増やすだけです。紙幣を刷って各銀行に配るわけではありません。(※日銀当座預金は「政府」「金融機関」のみが使える「お金」で、「政府と金融機関」や「金融機関同士」の決済に用いられます。)
この図で見ると日本銀行が直接個人に振込した様に見えますが、実際は日銀当座預金上の各金融機関の準備預金額を増加させただけです。同様に各金融機関は申請された個人の銀行口座の金額を増加させる。この予算執行までのプロセスを見れば気付くでしょうが、税金は全く関係がありません。というか財源自体を必要としないのです。また余談ですがこの給付金はインフラで言うところのメンテナンス費用、維持費の様なものでこれをケチれば国民が潰れて元も子もないのです。国民生活が痛んでいれば迷わず出すべきです。
国債発行や政府小切手でも同じです。国債は政府の借用書ですが原価ほぼ0で発行して、市中の金融機関に売ります。市中銀行にとっては利息の付かない日銀当座預金と利息の付く国債(定期預金に近いイメージ)なら、必要な当座預金以外は国債で運用したいですよね。決済は金融機関が保有する日銀当座預金口座残高を減らし、国庫を同額増やす。この政府の借用書を日銀が買う(買いオペ)と、売った金融機関の日銀当座預金は元の残高に戻ります。つまりここでスタート時と変化しているのは、政府は国庫の残高を得て、日銀は国債を得た事です。
さてここで例えば政府が国債と同額の道路工事を発注したとすると、日銀と金融機関を通じ工事会社の口座にその金額が記帳されます。つまり国債発行によって民間は同額だけ黒字となったのです。そして出来た道路は国富、国の資産です。「でも国債があるから、政府は日銀に借金があるだろ」と思われるかもしれませんが、実際には通貨発行残高を示すだけで返済する必要性はありません。どうしても返済したければ日本銀行券(日本銀行の借用書)を日銀に発行させて借用書同士を交換すれば終わりです。
つまり政府が外部から資金を調達しなくとも、通貨発行権がある以上日本銀行券を発行する事で資金不足に陥る事はあり得ません。
長くなったのでまた次回・・・。