分かり易い語り口で人気の池上彰氏。様々な分野の話題を解説する番組がよく放送されていますね。しかし「経済」についてはあまりにもミスリードが酷く目に余ります。完全に政府(或いは財務省)の広報と化しているようにすら見えます。「国民一人当たり〇〇◯万円の借金」「財政破綻」「消費税増税待った無し」など財務省の言いたい嘘を代弁しているかの様です。
お金の供給
政府がマネーサプライ(ざっくり言えば家計や企業側に流通しているお金)を増やす為にはどうすれば良いでしょう?
①日銀は政府の子会社なのでネイビーの枠で囲んでいます。お金をこの枠外、しかも金融機関ではなく企業や国民へ流すという事ですね。市中銀行は日銀当座預金を保有していますから、口座には預金が有ります。
②政府が国債を発行します。
③国債を市中銀行が買い取ります。代金は日銀当座預金が政府口座に書き換えられるだけで完了します。まだお金はネイビーの枠を出ていませんね。
④政府口座のお金を公共事業の支払いや給付金などに使う事で「お金」はネイビーの枠を超え企業や国民の元へ流れます。財政出動です。これをしなければいくら国債を発行しても、政府口座にお金がブタ積みされるだけで何の意味も有りません。アベノミクスの失敗原因です。
⑤日銀が市中銀行から国債を買い取ります。この時日銀は市中銀行が保有する日銀当座預金に買い取り額を入力するだけです。
ネイビーの枠の中は、政府が国債を発行した時②と同じ状態です。そして国債発行した分企業や国民の手元に「お金」が流通しているのが分かるかと思います。つまり国債発行+財政出動は企業や家計への貨幣供給なのです。
自国通貨建ての意味
「しかし国債を持っているのは日銀だから、政府は期日が来れば返済しないといけない。それは税金で払うのだから国民の借金だ。返せなければギリシャみたいになる。だから消費税は将来的には35%必要だ。」と池上氏等は言うのです。
まず明確にしなければならないのは「国債は借換える」という事です。つまり期日が来た古い国債は、新しい国債と差し替えるイメージです。
もし国債を保有しているのが国外であれば、期日にはそれを払うための外貨が必要になりますが、日本の場合は自国通貨建てなのでその心配は有りません。通貨発行権を有しており返済に必要な通貨不足に陥ることは有り得ないからです。
税金についても池上氏が「消費税」のみを対象にしているのは違和感しか感じません。所得税や法人税を下げスタビライザー機能のない消費税を上げれば、格差は拡大するばかりで社会全体としての景気は落ち込みます。消費税導入後の我が国の経済と税収を見れば明らかでしょう。税収を上げたいのであれば税率をあげるのではなく、消費と投資が増える様に所得の拡大が必須なのです。消費行動に水を差す消費税など無駄でしかありません。
政府は国民の所得を増やす事や供給能力の向上をサポートすべきで、個人や企業のそうした行動の足を引っ張る様な事は慎むべきです。メディアが死んで久しいですが、政府にNOと言える大手メディアはもう現れないのでしょうか。SNSやブログで個人が声を挙げるだけでは、TVや新聞、御用学者や御用作家の本などから情報を得ている人々に届かないのが歯痒いです。池上氏に良心が残っているのなら、財務省のプロパガンダに乗るのはもうやめて頂きたい。余りにも罪が重い。